タコは「悪魔の化身」だった!? 知られざる意外な秘密
カテゴリ: 食のこと
プリプリ食感のタコ入りパスタやアヒージョ、おいしいですよね!
でも、そんなタコが欧米の一部では、かつて「デビルフィッシュ(悪魔の魚)」と呼ばれて恐れられていたって、ご存知でしたか?
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「海の幸」なのか、それとも「海の怪物」なのか…。
今回は、タコをめぐる欧米のちょっと不思議で意外な歴史と食文化を、やさしくひもといてみましょう!
最初は人気者だった?古代地中海の食卓
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実は、タコの食文化の歴史はとっても古いんです。
なんと古代ギリシャ・ローマ時代には、すでにタコは庶民の人気食材!
とくに地中海沿岸では、ワインでじっくり煮込んだり、炭火で香ばしく焼いたり…
日常の食卓を彩るご馳走として、親しまれていました。
この伝統は、今でもイタリア、スペイン、ギリシャなどの食文化に息づいています。
行先で食べたタコのカルパッチョやリゾットが忘れられない…という方も多いのでは?
タコのイメージを一変させた、19世紀のベストセラー
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では、そんなタコがなぜ「悪魔の魚」なんて恐れられるようになったのでしょうか?
そのきっかけのひとつが、19世紀フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの小説『海の労働者(Les Travailleurs de la mer)』です。
この物語の中には、人間に襲いかかる巨大なタコが登場し、主人公との命がけの戦いが描かれます。
読者の想像力をかき立てるその描写は、自然の脅威や深海の神秘を表現するものでしたが、「タコ=恐ろしい怪物」というイメージを強烈に広めることにもなりました。
この小説はヨーロッパ中でベストセラーとなり、文学の影響力でタコの印象は一気に“悪役”へ…。
そこから「デビルフィッシュ」という、ちょっと気の毒なあだ名まで定着してしまったのです。
北欧伝説の怪物「クラーケン」でさらにイメージ悪化?
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さらに、タコの恐怖イメージを後押ししたのが、北欧の海に伝わる巨大な怪物「クラーケン」の存在です。
このクラーケン、もともとは正体不明の海の怪物でしたが、17世紀以降の文献や絵画では巨大なタコやイカのような姿で描かれることが多くなります。
「船をまるごと海に引きずり込む恐怖の生物」――そんなイメージが、文学や絵画、のちには映画にも受け継がれ、
「海の底には、得体の知れない怪物がいる…」という幻想とともに、タコの姿はますます“怖いもの”として定着していったのです。
「怖い」だけじゃない? タコを避けるもうひとつの理由
ただ、タコが敬遠される理由は、イメージだけではありません。
宗教的な食の戒律も、大きく関係しています。
たとえばユダヤ教では、『レビ記』や『申命記』の教えにより「ヒレとウロコのない魚介類」は食べてはいけないとされています。
このため、タコやイカ、貝類などはカシュルート(食の規定)に適さない食材とされていて、今でも信仰心の篤いユダヤ教徒の方々には「食べないもの」として扱われています。
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一方で、現代では食文化のグローバル化が進み、イタリア料理やスペイン料理の人気とともに、欧米でもタコを楽しむ人が増えてきました。
とはいえ、こうした歴史的・文化的背景をふまえると、「あの姿がやっぱりちょっと苦手…」という人が今でもいるのも、どこか納得できる気がしますね。
食文化は「イメージと暮らしの交差点」
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イスラム教やユダヤ教では「豚」が禁忌とされ、ヒンドゥー教では「牛」が神聖視される存在。
そして欧米の一部では、タコがかつて“海の悪魔”のように見なされていた――
日本ではたこ焼きやたこせんなど、子どもにも人気な馴染みの深い食材ですが、別の角度から見てみるとこんなにも違うなんて、興味深いですね!