世界一臭い缶詰「シュールストレミング」とは? スウェーデンで愛され続ける“半発酵ニシン”の実態

世界一臭い缶詰「シュールストレミング」とは? スウェーデンで愛され続ける“半発酵ニシン”の実態

食のこと

缶を開けた瞬間に立ち上る強烈な匂い。

「世界一臭い食べ物」として日本でもニュースやYouTubeでたびたび取り上げられる
シュールストレミング(Surströmming)をご存じでしょうか。

“罰ゲーム食品”として知られがちですが、実際はスウェーデンで長い歴史を持つ伝統料理。

この記事では「新発見!世界の料理」シリーズの中でも、トップクラスの“クセの強さ”を誇るシュールストレミングについて見ていきましょう!


シュールストレミングとは?

シュールストレミングは、スウェーデン北部で作られるニシンの発酵食品

バルト海で獲れるニシンを原料とし、塩漬けにして“半発酵”状態まで熟成させたあと、そのまま缶詰にしてさらに発酵を進めるという独特の製法で作られます。

チーズや硫黄のような香りを思わせる強烈な発酵臭が特徴で、これこそが世界でもっとも臭い食品と評価される理由です。

主にスウェーデン北部のノールランド地方で生産されており、現地では古くから受け継がれる伝統的な保存食として親しまれています。

シュールストレミングの作り方

バルト海で水揚げされたニシンを鮮度のいい状態のまま軽く塩漬けにし、専用の樽に移して数週間から数ヶ月かけてじっくりと発酵させます。

樽の中で発酵が進み、酸味と香りが強まった段階で缶詰に移されますが、このとき発酵は完全には止まりません。缶の中で発酵が続くという、保存食としてはかなり珍しい工程こそが、この料理に独特の刺激を与えています。

本場スウェーデンでの食べ方

日本でよく見られる「缶を開けてそのまま食べる」というスタイルは、本場ではほとんど行われません。

スウェーデンではトゥンブロードという薄いパンに、茹でたじゃがいもや刻んだ玉ねぎ、サワークリームを合わせて包むのが一般的で、匂いを和らげながら旨味を楽しむ食べ方として定着しています。

匂いの拡散を抑えるため、水を張ったバケツの中で缶を開ける家庭も多く、強烈な香りへの対策が日常的に行われています。

味はおいしいのか? 

香りのインパクトがあまりに強いため「罰ゲーム食品」と思われがちですが、味そのものは塩気と酸味が前に出た力強い魚の風味で、発酵による深い旨味を好むファンも多くいます

パンやじゃがいも、乳製品と一緒に食べることでバランスが取れ、匂いの印象とは裏腹に意外と食べやすいという声もあります。

ただし、食べ方や環境によって印象は大きく変わるため、初めて挑戦する場合は本場の食べ方を再現するのが無難です。

スウェーデンで愛され続ける理由

長い冬を耐えるために保存食が欠かせなかった北欧では、発酵や塩漬けの技術が生活の一部として発展してきました。

中でもバルト海のニシンは貴重なたんぱく源であり、シュールストレミングは家庭ごとに味や食べ方が受け継がれてきた、地域文化の象徴ともいえる存在です。

現代でも季節行事や家族の集まりで食べられることが多く、スウェーデンの人々にとっては“強烈な匂いも含めて”思い出の味として親しまれています。

もし機会があれば罰ゲームとしてではなく、そんな文化も感じながら本場の食べ方を再現してみるのもいいかもしれませんね。

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