タコスに隠された“幻の白い粒”の正体は?メキシコで愛される”アリの卵”
カテゴリ: 食のこと
メキシコのレストランで、あなたの前に運ばれてきたタコス。
その上に、白くてつぶつぶした謎の食材が乗っていたら…あなたは何だと思いますか?
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見た目からは想像もつかないかもしれません。
でもその正体はなんと…「アリの卵」なんです!
実はこれ、エスカモーレと呼ばれるメキシコの超高級食材。
その希少性と豊かな風味から「昆虫のキャビア」とも呼ばれ、世界中の美食家たちに愛されているんです!
今回は、そんなメキシコの古代から続く幻の珍味、エスカモーレの世界をのぞいてみましょう。
「昆虫のキャビア」はなぜ幻?意外な収穫現場と希少な正体
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エスカモーレとは、メキシコ料理で食べられるアリの卵のこと。
正確には、ツムギアリ(Liometopum apiculatum)という巨大なアリの幼虫や蛹(さなぎ)を指します。
テキーラの原料にもなる「リュウゼツラン(竜舌蘭)」という植物の根元、あるいはその周辺の土中にアリが巣を作ります。そして、その奥深くに白くて美しい卵を育てるんです。
エスカモーレが収穫できるのは、年に一度、春先のかなり短い期間だけ。
メキシコ中央高原の気候条件で、アリが繁殖活動をする特定の時期にしか現れない、まさに「旬の中の旬」の食材なんです。
しかも、巣を守る働きアリはとても攻撃的です。そのため、収穫作業は常に危険と隣り合わせ。
熟練の収穫者が細心の注意を払いながら、手作業でアリの巣を掘り起こし、卵を大切に採取していくのです。
この限られた収穫時期と、命がけの作業こそが、エスカモーレが「幻の珍味」と呼ばれる所以なんですね。
古代メキシコ人が守り抜いた“命の恵み”
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エスカモーレの食文化の歴史は古く、16世紀にヨーロッパからスペイン人がやってくるよりもずっと前、メキシコの大地でアステカ文明が栄えていた時代から続いていたと考えられています。
山や砂漠が多いメキシコ中央高原では、狩猟でいつでも肉が手に入るわけではありませんでした。
そんな厳しい自然環境で暮らす人々にとって、エスカモーレは非常に貴重なたんぱく源だったのです。
実際に、エスカモーレは乾燥重量あたりで約40~60%がたんぱく質という高い栄養価を誇ります。また、鉄分やカルシウムなども豊富に含まれているそう。
古代の人々にとって、まさに「自然がくれた栄養の宝箱」だったと言えるでしょう。
ちなみに「エスカモーレ」という名前は、古代アステカの言葉であるナワトル語の「azcatl(アリ)」と「molli(煮込み、シチュー)」が由来という説も。
この珍味がアステカ時代から煮込み料理やソースとして食されてきた歴史が伺えますね。
リュウゼツランという特定の植物と共生するアリの生態系を深く理解し、その恵みを賢くいただく。
そこには厳しい自然環境の中で生き抜くための古代メキシコの人々の優れた知恵と、自然への深い敬意があったんだと思うと、なんだかロマンを感じます。
一口食べたら概念が変わる!“アリの卵”が奏でる絶品ハーモニー
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「アリの卵」と聞くと、どうしても味の想像がつかず、ちょっと勇気がいるかもしれません。
でも、その食感と風味を知れば、きっとイメージが変わるはず!
エスカモーレは、加熱するとプチプチとした独特の食感が生まれ、口の中ではバターのようにクリーミーで、ナッツのような香ばしい風味が広がります。
動物性の食材でありながら、クセや臭みはほとんどなく、非常に上品な味わい。
その繊細な風味と食感こそが、「昆虫のキャビア」と称される所以です。
日本の食材で例えるなら、魚の白子やタラコに近い食感だと表現する人もいます。
代表的な食べ方は、バターやニンニク、玉ねぎと一緒に炒めるシンプルなソテーです。
仕上げにエパソテという現地のハーブで香りづけをすることも。
これを温かいトルティーヤに包んでタコスにしたり、オムレツの具材にしたりするのがメキシコでは定番のスタイルです。素材の味を活かした、素朴ながらも贅沢な一品です!
初めて挑戦するなら、やはりタコスがおすすめ。
ワカモレ(アボカドのディップ)やサルサソースの風味が、エスカモーレのクリーミーさと絶妙にマッチして、とっても食べやすくなりますよ!
勇気を出せば、新しい美食との出会いが!

その正体を知ると少しドキッとしてしまうエスカモーレですが、食わず嫌いはもったいない!
近年では、高たんぱくでサステナブルな食材としても、世界中の美食家やシェフの間でも再注目されています。
残念ながら日本ではなかなか食べることができないエスカモーレですが、もしメキシコを訪れる機会があれば、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?
一口食べれば、きっとあなたの美食の概念が変わるはずですよ!