世界の食卓をAmazonから覗いてみた:エジプト編
カテゴリ: 食のこと
エジプトってどんな国?
悠久のナイル川が流れ、ピラミッドやスフィンクスに代表される古代文明の遺産を今に残す国、エジプト。

観光地として華やかな一面を持つ一方で、近年はインフレや通貨安の影響により物価が高騰し、多くの人々が厳しい生活を強いられています。
それでも「食」は人々の暮らしを支える大切な存在。
今回はエジプト版Amazonの食品ベストセラーランキングを参考に、そこから見える「今」の食文化を覗いてみましょう。
https://www.amazon.eg/-/en/gp/bestsellers/grocery/ref=zg_bs_pg_1_grocery?ie=UTF8&pg=1
(※ランキングは常に変動します)
パスタ:国民食「コシャリ」を支える主役


エジプトのAmazonでは、パスタ製品が数多くランクインしています。
実際にエジプトは世界有数のパスタ消費国で、一人当たりの年間消費量は約8〜9kg。
日本の数倍にあたり、国際統計でも上位に位置しています。
背景にはいくつかの理由があります。
まず、パスタは調理が手軽で経済的。
米やパンと並び、家計に優しい主食として定着しています。
そして大きな要因は、国民食「コシャリ」の存在です。

コシャリはご飯、レンズ豆、ひよこ豆に加え、マカロニやスパゲッティを混ぜ合わせ、トマトソースをかけていただく料理。
ボリューム満点で栄養も豊富なため、幅広い層に愛されています。
屋台や専門店が街中にあり、1皿数十円〜100円程度でお腹いっぱいになれるため、特に労働者や学生に人気!
貧困層から中流層まで、広く親しまれている料理といえるでしょう。
パスタはこのコシャリに必要不可欠なため、人気なんですね。
牛乳:ラマダーンに欠かせない栄養源


ランキングでパスタと同じくらい目立つのが牛乳です。
これは、エジプトでは乳製品の利用が盛んで、特にラマダーンの期間には需要が高まりまるからなんです。
断食を行うイスラム教徒にとって、日の出前のスフール(夜明け前の食事)や日没後のイフタール(断食明けの食事)は重要な栄養補給の機会。
牛乳は効率よく栄養や水分をとれるため、飲まれることが多いのです。
また、エジプト最大手の乳製品メーカー「ジュハイナ(Juhayna)」が常温保存できる牛乳を安定的に供給していることも大きな理由のひとつ。
スーパーや商店で手に入れやすいインフラが整っているため、都市部では牛乳が身近な存在になっています。
ただし牛乳は豆やパンに比べるとやや高価で、農村部や低所得層では日常的に飲むのは難しい食品。
代わりに、ヨーグルトや発酵乳(ラバン)を量り売りで少量購入するなど、より手軽な形で乳製品を取り入れる工夫がされています。
ひまわり油:家計を支える万能オイル

もうひとつ注目すべき食材が食用油、特にひまわり油です。
クセのない風味と幅広い用途から、揚げ物や炒め物などあらゆる調理に使われています。
代表的なのは、そら豆のコロッケ「ターメイヤ」。
外はカリッと、中はふんわり仕上げるためにたっぷりの油を使います。家庭料理から屋台の軽食まで、油はエジプトの食生活に欠かせない存在です。

エジプトは植物油の多くを輸入に頼っており、近年の価格高騰は家計に大きな打撃を与えています。
その中でもひまわり油は比較的入手しやすく、用途が広いため、多くの家庭で選ばれ続けています。
エジプトの食のリアル
エジプト版Amazonの食品ランキングから見えてくるのは、豪華なごちそうよりも「生活に根ざした食」。
安価でボリュームのあるパスタ、ラマダーン期に重宝される牛乳、そして日常の料理に欠かせないひまわり油。
そこには経済的な制約のなかでも工夫を凝らし、家族の食卓を支える人々の姿が浮かび上がってきます。
ただし注意すべきは、AmazonのようなECは都市部の中流以上の層が中心であり、農村部や低所得層の暮らしをそのまま映しているわけではないという点です。
エジプト全体の人口は1億人を超えますが、オンライン購買を利用するのはその一部(推定で1割程度)。
その他の多くは市場や商店で現金購入を続けています。

それでも、パスタやひまわり油は所得層を問わず広く使われ、牛乳や乳製品は階層によって形を変えながら取り入れられていることがわかります。
ランキングはあくまで都市部の一端ですが、今のエジプトの食文化は「手軽さ」「栄養」「経済性」というキーワードで彩られていました。
次回はどこの国をのぞいてみましょうか?お楽しみに!